イエロー・ピス

記録 - 19██年 █月 █日:

＿＿ つまり、もう一度説明しますが、僕がこのメソッドを発見したのは、国民的なあの乳酸菌飲料のお陰なんですよ。ほら、あるじゃないですか。原液を水で薄めて飲みやすい濃さに、調整して飲む。隠さず言えば、カルピスですよね。そこに着目して作ったのがこの栄養ドリンクなんです。ええ、今はもう、日本中で飛ぶように売れていますよ。

＿＿ え…と、ああ、はいはい。まずはなぜ原料にこれをわざわざ選択したのか、でしたっけ。それはもう、これが一番即効性のエネルギー補給材として最適だからです。ははは（笑）僕はこの仕事にこだわりを持っていて、できるだけ多くの人達に元気を届けたいんです。原料が原料なので、最初は全然量も作れなかったんですけどね。

＿＿ 着想をどこから得たのか、ですか。それはさっき説明した通り、あの乳酸菌飲料の飲み方が元なんですけど。えーと、まずどの家庭にもトイレがあるじゃないですか。そこで皆オシッコするわけじゃないですか。

＿＿ 少し下品でしたか。ははは（笑）でもまあ、説明している通り、それが原材料なので。それでは続けますね。僕はオシッコをし終わった時、ふとトイレを覗いてみたんですよ。いや、本当に何も他意は無くて。ただ、ふとなぜか覗いて見たくなったんですよね。覗いてみたら、黄金色の液体がそこに溜まっているわけです。そりゃまあ、オシッコですしね。それを見た僕は何故か、何処かに美しさを感じました。ええ、それは何というか… 職人が丁寧に握って作り上げた高級な寿司を見た様な。どこから見ても、美味しそう、と感じる様な、どこか完成された美しさを感じたんです。僕はゴクリと喉を鳴らしましたね。

＿＿ すぐ後にハッ、と我に帰りました。オシッコを飲料にする。何を言っているんだ。くだらない、と思いましたね。まあそれで、自分の考えていたばかばかしい考えと共に、オシッコを水流で流そうとしたとき、ふと思い出したんです。カルピスの作り方を。原液をコップに注いで、水で飲みやすい濃さに薄める。気づいたんです。今このトイレに溜まっている、この黄金色の液体は、「オシッコのカルピス」だったと言うことに。

＿＿ トイレにはまず水が溜まっているじゃないですか。その中にオシッコをする訳です。ほら、ね。人間が安全に飲める薄さまで薄まっている訳です。なんてことだ、と思いましたね。この人間が生み出した叡智の結晶に気づかず、平然とトイレに流していた自分の愚かさを恨みました。

＿＿ その後、実際に飲んでみたら、雷に打たれた様な気分になりましてね。こんなにおいしい飲み物が存在していいのか、と。そしてすぐに商品化に取り掛かりました。勿論、原材料は全て、真水と僕のオシッコです。ええ、そうですよ。「食べている物によって排泄物の要素が変わる」というのは有名な話ですが、今飲んでるこの飲み物も、全てこのドリンクのために会社が産み出した、特別な栄養剤です。味？（笑）ドリンクに比べちゃ、飲めたものじゃないですよ。ただこの栄養剤も、オシッコにした瞬間、最高に美味しくなってしまうんですから人間の体は不思議ですよね。オシッコのカルピス。まさにCalpisに"s"を一つ付け足して"Calpiss"って訳です。はははは（笑）えーと、これがこのドリンクの誕生秘話の全貌、って訳です。これからもこの栄養ドリンクを、どうぞ、よろしくお願いしますね。

記録 - 20██ 年 █月 █日: